TAX IMPACT 制作費と同額だけ税金が減るわけではない
Webサイト制作費を当期の費用として処理できる場合、制作費の分だけ課税所得が減ります。ただし、減る税金は制作費そのものではなく、課税所得の減少に対応する税額です。
概算は、「当期に費用化できる金額 × 限界実効税率 = 税負担差の概算」という式で考えます。
限界実効税率は、所得が追加で1円増減したときに、法人税、地方法人税、法人住民税、法人事業税、特別法人事業税などが合計でどの程度変わるかを示す考え方です。
SIMPLE EXAMPLE まず30%で考える簡単な例
300万円の制作費を当期に全額費用化でき、限界実効税率を30%と仮定した場合の概算です。
- 制作費:300万円
- 課税所得の減少:300万円
- 税負担差:300万円×30%=約90万円
- 税負担を差し引いた実質負担のイメージ:300万円-90万円=約210万円
これは90万円の利益が生まれるという意味ではありません。会社からは300万円が支出されます。税負担の軽減を考慮すると、実質的な資金負担を約210万円と見ることができる、という比較です。
ESTIMATES 制作費別の概算例
東京都23区内の法人を想定した営業上の概算例です。個別企業の税率ではありません。
限界実効税率21.4%の場合
- 100万円:約21.4万円
- 300万円:約64.2万円
- 500万円:約107.0万円
限界実効税率33.6%の場合
- 100万円:約33.6万円
- 300万円:約100.8万円
- 500万円:約168.0万円
限界実効税率35.4%の場合
- 100万円:約35.4万円
- 300万円:約106.2万円
- 500万円:約177.0万円
実際の税率は、所在地、資本金、株主構成、所得額、外形標準課税、税額控除、防衛特別法人税の適用などによって変わります。制作費全額に同じ税率が適用されるとも限りません。
TAX BANDS なぜ20%台と30%台に分かれるのか
中小法人では、一定の所得部分に法人税の軽減税率が適用されます。所得が高い部分では法人税率が上がり、地方税を組み合わせた限界実効税率も30%台になることがあります。
たとえば、制作前の所得が850万円で100万円を費用化する場合、所得の一部が800万円を下回るため、高い税率帯と低い税率帯にまたがる可能性があります。
EXCEPTIONS 税負担差が小さくなる、または当期に出ない場合
赤字または繰越欠損金がある
もともと当期の課税所得がない場合、費用を増やしても当期の法人税が直接減らないことがあります。
制作費の一部がソフトウェアになる
独自システム部分が資産計上される場合、制作年度に全額を費用化せず、耐用年数に応じて複数年度に分けて費用化します。
決算日までに完成していない
契約や支払いが完了していても、未完成で納品・検収されていなければ、当期費用として処理できない場合があります。
SPECIAL CORPORATE TAX 防衛特別法人税の影響
一定の法人では、防衛特別法人税が発生することで限界的な税率が高くなる場合があります。令和8年4月1日以後に開始する事業年度から、基準法人税額から年500万円の基礎控除を差し引いた課税標準に4%を乗じる制度です。
すべての中小法人に同じ影響が出るわけではありません。また、税額が0でも申告が必要とされているため、個別の適用は顧問税理士へご確認ください。
INVESTMENT DECISION 節税効果だけで投資を判断しない
税率が35%であっても、100万円を支出して減る税金は概算35万円です。残りの65万円は会社の実質的な負担です。使う必要のない支出を増やすことは、資金を減らす結果になります。
判断の順番は、次のとおりです。
- Webサイトで解決したい事業課題があるか
- 制作後に売上・採用・業務改善へつながるか
- 必要な機能と予算は妥当か
- 制作費を経費または資産としてどのように処理するか
- 決算・資金繰りを踏まえて、いつ実施するか
参考情報
- 制作費と税負担差を混同しない
- 赤字・欠損金・資産計上を確認する
- 制作時期と決算日を合わせて考える
- 正式な試算は顧問税理士へ確認する