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04 / GROW

育てるフェーズの実務知識

長期化・中断・担当交代したWeb制作を、安全に再開するには

過去の成果物を正解とせず、現在も有効な条件を復元する

中断したWeb制作の資料と進捗を再確認する作業デスク

PRACTICAL KNOWLEDGE 実務知識

WRITTEN BY

FHW制作チーム

反省会と日々の制作記録をもとに、担当スタッフが実際に迷い、確認し、判断した過程を整理しています。

Web制作が止まる理由は、制作上の問題だけではありません。社内確認、担当者の変更、事業方針、素材、契約、別プロジェクトの優先などによって、確認期間が長くなったり、一度中断したりすることがあります。

再開するときに危険なのは、「途中まで作ってあるから、続きから始めればよい」と考えることです。画面、ソースコード、課題が残っていても、当時の目的、公開環境、担当者、承認状態が現在も同じとは限りません。

私たちが担当した制作にも、確認と修正が長期化したもの、段階公開中に担当者が交代したもの、長い中断後に再キックオフしたものがありました。再開時に「どこまでできていましたか」と聞くだけでは戻れません。過去の成果物をそのまま正解とせず、確定事項、未確定事項、現在も有効な条件、残作業を分けて復元します。

ソースが残っていることと、再開できることは同じではない

中断した制作には、さまざまなものが残っています。

  • デザインデータ
  • HTMLやCMSのソース
  • 原稿と画像
  • Backlogなどの課題
  • メールやチャットのやり取り
  • 見積りやスケジュール
  • 公開環境や確認用URL

しかし、ファイルが残っているだけでは、どれが確定版か、なぜその案を採用したか、誰が承認したかは分かりません。また、当時利用していたCMS、ライブラリ、外部サービス、アカウントが現在も使えるとは限りません。

再開前には、成果物の有無だけでなく、その成果物を成立させていた前提を確認します。

最初に四つの状態へ分ける

過去の資料と残作業を、次の四つに分けます。

確定済み

現在の目的と条件でも有効で、変更せず利用できるものです。ただし、過去に確定したという記録だけでなく、現在も有効かを確認します。

再確認

当時は確定していたものの、担当者、公開環境、事業内容、素材などが変わったため、現在の判断が必要なものです。

不要

方針変更、サービス終了、別ページへの統合などにより、制作対象から外すものです。削除する理由も残します。

追加

中断後に新しく必要になったページ、機能、法務対応、運用条件などです。過去の残作業と混ぜず、新しい判断として扱います。

この分類によって、「前回の続き」と「今回新しく決めたこと」の境界が分かります。

再開時に確認する五つの前提

1. 目的と公開範囲

サイトを作る目的、対象者、公開するページ、段階公開の範囲が現在も同じか確認します。事業内容や採用方針が変わっていれば、過去の構成をそのまま完成させても役割を果たしません。

2. 担当者と承認経路

現在の窓口、原稿・デザイン・機能の確認者、最終承認者、公開作業者を確認します。担当交代時には、過去のやり取りを渡すだけでなく、決定済み、未決定、確認待ちを整理して説明します。

3. 素材とデザイン

ロゴ、写真、動画、原稿、デザインデータについて、最新版と利用権限を確認します。過去の画面を正解として再現するのではなく、現在のブランド方針、端末、文字量へ合っているかを見直します。

4. 技術と公開環境

CMS、サーバー、ドメイン、外部サービス、ライブラリ、ビルド環境、アカウントを確認します。古い環境をそのまま起動できても、安全に更新・公開できるとは限りません。

5. 契約範囲と残作業

どこまでが以前の制作範囲で、どこからが追加対応かを整理します。契約条件そのものを公開コンテンツへ出す必要はありませんが、制作進行では修正対象、追加対象、公開後対応を区別する必要があります。

画面ではなく、判断理由を引き継ぐ

担当者が交代すると、完成画面は共有されても、なぜその構成や表現を選んだかが失われやすくなります。その結果、同じ論点を再検討したり、一部分の変更によって全体方針が崩れたりします。

引き継ぎでは、次を残します。

  • 採用した案と理由
  • 採用しなかった案と理由
  • 共通仕様と個別仕様
  • 変更すると他ページへ影響する項目
  • 現在保留している論点
  • 次に判断する担当者
  • 公開後に見直す項目

詳細な議事録をすべて読み直してもらうより、現在の判断状態へ整理して渡す方が再開しやすくなります。

長期化した案件では、確定範囲を守りながら進める

確認期間が長い案件では、すべてが確定するまで作業を止める方法と、すべてを暫定状態で進める方法のどちらにも問題があります。

ページや機能を、例えば次の状態へ分けます。

  • 確定済み
  • 確認中
  • 追加対応
  • 公開条件待ち
  • 公開後対応

変更指示には、変更箇所だけでなく、理由と影響範囲を添えます。時間が空いた後も、何を守り、どこから再開すればよいか判断できるためです。

確定済みのコードやデザインへ変更を加える場合は、該当箇所だけでなく、共通部や関連ページへの影響を確認します。「確定済み」は二度と変えないという意味ではなく、変更時に影響を確認する基準です。

段階公開では、共通化と公開範囲を分ける

将来公開するページを見越して共通ヘッダーや部品を作っていても、未公開の導線まで先に表示してよいとは限りません。

段階ごとに、次を整理します。

  • 対象URL
  • 必要素材
  • 共通部への変更
  • 現在表示してよい導線
  • 確認者と承認状態
  • 公開条件
  • 次段階へ送る変更

同じコードを利用することと、同じタイミングで公開することは別の判断です。担当交代時にも、実装済み、未反映、確認待ちを区別します。

再キックオフで確認すること

再開時の打ち合わせでは、残作業だけを並べません。

  1. 現在の目的と対象者
  2. 中断前に確定したこと
  3. 中断後に変わったこと
  4. 再確認が必要なこと
  5. 現在の担当者と承認者
  6. 素材・データ・権限の状態
  7. 公開環境と公開方法
  8. 残作業と追加作業
  9. 新しい確認・公開スケジュール
  10. 次回中断しても再開できる記録方法

再開を急ぐほど、最初の棚卸しを省きたくなります。しかし、過去の前提が変わっている場合、早く作り始めることが手戻りにつながります。

この進め方が有効な場合

  • 数か月以上の中断がある
  • 顧客側または制作側の担当者が交代した
  • 確認と修正が長期間続いている
  • 複数段階で公開する
  • 過去のCMS・ソース・デザインを再利用する
  • 事業、ブランド、公開環境が途中で変わった

別の進め方が適する場合

中断期間が短く、担当者、目的、素材、環境が変わっていない場合は、四分類の棚卸しや大きな再キックオフは不要です。また、過去の実装が現在の要件へ合わず、再利用の調査コストが新規制作を上回る場合は、部分的または全面的な作り直しを選ぶ方が合理的です。

再利用すること自体を目的にせず、残っている資産を調べ、再利用する範囲と再設計する範囲を判断します。

再開チェックリスト

  • 現在の目的と公開範囲を確認したか
  • 確定済み・再確認・不要・追加へ分類したか
  • 現在の窓口、確認者、承認者が明確か
  • 最新の原稿、画像、デザインを特定できるか
  • 過去の判断理由を確認できるか
  • CMS、サーバー、外部サービスが現在も使えるか
  • 権限とアカウントを確認したか
  • 残作業と追加作業を分けたか
  • 段階公開の対象と共通部への影響を整理したか
  • 次に中断しても再開できる状態を残すか